土地のエネルギーというのは、そこに暮らす人々に影響を与えないはずはないと思っています。
世界的な画家ポール・ゴーギャン。挫折と苦悩の末に向かった南洋の地で、彼にまた絵筆をとらせ、不朽の名作を幾つも創造させた「タヒチ」という土地のエネルギーに私も触れたくて、彼の地タヒチに向かいました。
ポール・ゴーギャンはフランス時代は全く絵が売れず、やがて奥さんや子供も彼から離れ、孤独な中、その日食べるパンにも困窮するような不遇の日々を送っていたそうです。そして家族も故国も捨てて向かった先は、西洋文明とは無縁の原始的な自然が広がる南洋の楽園タヒチ。43歳の誕生日の2日後だったといいます。
目の前に広がる汚れの無い海や果てしなく広がる青い空、色彩鮮やかな花やたわわに実った果実、そして純粋な人々。
島の無垢な少女と、生まれたままの姿で海で泳ぎ、やがてまた絵筆を持ち始めました。尽きることのない題材を前に、来る日も来る日も彼はキャンパスに情熱を傾け、そして生まれたエネルギーに満ちた不朽の名作の数々。
色鮮やかな色彩、自然豊かなタヒチの風景と褐色の肌の人々。大胆で生命力溢れる作品の数々は、今もなお世界中の多くの人々を魅了してやみません。
タヒチでの2週間は、東京で大切にしていたもの達がさほど重要でもないかもしれないと、私に思わせてくれました。オープンエアの部屋で風を感じ、島めぐりの途中雨に打たれ、落ちたパパイヤを拾って頂き、夜の穏やかな海に身をゆだね・・・
実はこのタヒチの旅もそろそろ終盤を迎えようとする頃、なんとも不思議な出来事が起きたのです!
ボラボラ島からタヒチ島に向かう機内。隣の席になった現地の男性。50代半ばといったところでしょうか? ボラボラでのカヌーの大会に出場してきたといいます。
精悍に日焼けした褐色の肌にランニング姿、目には深い叡智を宿しているような知的さが感じ取れました。そしてなぜか初対面の日本人におもむろに人生論を語ってくれたのです。
空港のターンテーブルでスーツケースを待っていると、また隣にその男性。社交辞令を交わしているうちに通り道だからと私を宿泊先まで送ってくれることに。。。お言葉に甘えて助手席に乗り込み、間もなくホテルに着こうかという頃、彼がこう切り出しました。
「日本ではゴーギャンという人は有名か?」
「彼は日本どころか世界的に有名な方ではないでしょうか?」
すると彼は驚くことを口にしたのです。
「実は僕は彼のひ孫なのだ。母方の曽祖父がゴーギャンなんだよ。」と。。。!!!
驚いて言葉を失っている私を尻目に、彼は私のスーツケースを降ろして颯爽と走り去ってしまいました。。。
ゴーギャンに始まり、ゴーギャンで終わったなんとも不思議な私のこのタヒチ体験。。まさにゴーギャンに導かれたような旅路でした。
時に人生には期待を大きく超えるような現実が起こることがあります。まさにserendipity!
偶然の更にその先! 旅に出ると特にその引き寄せを強く感じます! Beyond! 更にその先の未知のものに出会いたい!と強く感じる瞬間でした。